戸籍の附票について

相続登記をご依頼いただく際にお客様から「手続きに必要な戸籍謄本等は全て集めました」と言って頂くケースがあります。
しかし、「戸籍の附票」若しくは「住民票の除票」が含まれていることは殆どありません。
これは当然と言えば当然で、他の相続手続き(口座の解約等)では使用するケースは殆ど無いですし、役所からも「附票は要りませんか?」等と言って頂くことは皆無だからです。

住所の証明書類

ここでは相続登記に戸籍の附票が必要な理由について大まかに記載いたします。

被相続人名義の不動産を相続人名義に変更するとき、その不動産が確かに被相続人のものであることを証明しなくてはなりません。
その証明手段の一つとして戸籍の附票が必要になります。

被相続人が所有していた不動産の登記簿には所有者である被相続人の氏名と住所が登記(記録)されています。仮にその住所が「A町100番5号」だったとします。そして、被相続人が亡くなった時の住所、つまり最後の住所が「B町200番10号」だったとします。この時、被相続人の住所が「A町100番5号」にも「B町200番10号」にも存在したことを証明出来て初めてその不動産が被相続人名義のものであると認められる、という感じです。

住所を証明する書類として馴染みのあるのは住民票です。
亡くなった人の場合は「住民票の除票」と覚えておけば良いです。
住民票に記載される住所は現在の住所と一つ前の住所です。住民票の除票の場合も内容はほぼ変わりません。

上記のように住所の変更が1度だけであれば住民票の除票でも住所の証明書類として使用できます。しかし、中には住所を何度も変更しているケースもあります。例えば、上記の例で言うと「A町100番5号」→「X町15番3号」→「B町200番10号」となっているようなケースです。この場合だと住民票の除票に載る住所は「X町15番3号」と「B町200番10号」だけなので、登記簿に記載されている「A町100番5号」を証明することが出来ません。

この時、役に立つのが「戸籍の附票」になります。
「戸籍の附票」には過去の住所が全て記載されているため、住所を2回以上変更している場合でも登記されている住所まで遡って証明できます。
ただ、例外もあるのが厄介なところです。

保存期間の問題と解決策

戸籍の除票の附票及び改製原附票の保存期間は現在は150年となっておりますが、令和元年の法改正までは5年間でした。
「戸籍の除票の附票」とは、例えば本籍地が変わったり亡くなったりした人の戸籍の附票のことを指します。
令和元年6月までは本籍地が変わったり亡くなった後、5年が経過するとそのデータは廃棄されていたということになります。

「改製原附票」とは古い戸籍の附票のことを指します。戸籍謄本にも原戸籍(改製原戸籍)というものがありますが、イメージとしてはそれと同じです。
古い戸籍謄本は手書きされたものがありますが、戸籍の附票にも同様にそうした手書きのものがあります。
令和元年6月までは本籍地が変わっていなくても、現在も生存していても5年が経過すれば廃棄されてたという相続登記を申請するうえではある意味とんでもない制度だったと言えます。

ただ、5年で廃棄という運用は自治体により差があり、5年が経過しても保存している(保存していた)自治体は結構あります。
ちなみに、福岡市や北九州市は古いデータについては廃棄されていますので昔の住所を調べようとしても調べることが出来ません。

上記の事情により相続開始から時間が経過している場合や被相続人の本籍地に動きがある場合は戸籍の附票を取得しても過去の住所(上記例でいう「A町100番5号」の住所)を確認することが出来ないケースがあります。

ではどうするか、ですが不動産の権利証(登記済権利証書)の有無で動きが変わってきます。

権利証を住所の証明書類として使用する

戸籍の附票を取得しても登記されている住所から最後の住所までを証明できない場合、不動産の権利証を申請の添付書類として提出すれば登記することが出来ます。
権利証には登記した時の所有者の住所、つまり被相続人の住所が記載されているので、当時の住所は証明できることになります。
イメージとしては「権利証が出てくるから本人の不動産に間違いなかろう」というのが個人的にはしっくりきますが、細かいことはさておき権利証があれば戸籍の附票の問題は解消できます。

上申書

権利証もない場合は不在籍証明書、不在住証明書を取得して相続人全員が上申書を作成し、それら一切合切を提出して申請する方法になります。
上申書の内容は「不動産の所有者と被相続人は同一人物で間違いありません。何かあってもご迷惑おかけしません。」みたいなちょっと嫌な感じの内容なんですが、最終的な方法としてはこの形になると言えます。
最近(2023年12月)になって「上申書まで作成しなくても申請可」というパターンが明確になりましたが万能ではなさそうなので、出来れば権利証のところで手続きが出来るのが手間がかからなくて良いかなと思います。