必要書類の集め方

相続登記に必要な書類について記載していきます。
相続登記には大きく分けると「人」に関する書類と「不動産」に関する書類が必要になります。ここではまず「人」に関する書類について記載します。

なお、2024年より一つの窓口で全ての戸籍謄本を取得できるサービスが開始される見込みです。そのサービスが開始されると以下に記載する手間は殆どのケースにおいて解消できると言えますが、運用が開始されるまではこのまま記載しておきます。

例として、父親が亡くなり、その相続人が子2名のケースで説明します。父親の配偶者(子から見た母親)は既に死亡しているとします。

被相続人の戸籍謄本

まずは被相続人(父親)の出生から死亡までの戸籍謄本を集めます。
戸籍を集めると言ってもどこから始めるかですが、基本的には新しい物から古い物を順に取得していく形です。
現在は郵送での申請も可能ですので、被相続人の本籍地がある役所にまずは請求します。

この時、本籍地が分からないというケースも多いと思います。私も自分の本籍地を正確に答えろと言われてもちょっと自信ないです。
本籍地が分からない場合は住民票を取得することで解決することが殆どです。
住民票を請求する際、「本籍地記載」という項目にチェックを入れ(分からなければ窓口で申し出て)請求します。

発行された住民票には本籍地が記載されてきますのでそれで判明する形になります。なお、亡くなられた人の住民票は「住民票の除票」だったり「除住民票」だったり請求する先によって呼び名が異なりますが、住民票と言っておけば特に問題ありません。

本籍地が分かったところでいよいよ戸籍謄本の請求です。
戸籍謄本以外にも必要な書類として除籍謄本、改製原戸籍など色々ありますが、請求する際は「出生から死亡まで」と言って申請すればそこで取得できる戸籍謄本等は全部出してもらえると思います。

この時、必ず「戸籍の附票」を請求するようにしましょう。
戸籍の附票は過去の住所が全て記録されている書類になります。
福岡市や北九州市のように保存期間の経過で過去のデータが廃棄されており、昔の住所までは記載されていないこともありますが、二度手間にならぬよう一緒に請求しておきましょう。

戸籍の附票については別のページに詳しく記載しておりますので、そちらも併せてご確認ください。

戸籍謄本を窓口で請求する場合もそうですが、郵送で申請する場合も簡単なメモ書きを入れるようにしましょう。
例えば
「○○○○の出生から死亡までの戸籍謄本を全部と戸籍の附票を送ってください」
「他の地域にも戸籍(本籍地)がある場合は、どこに請求すれば良いか教えてください」
という感じです。

古い戸籍謄本は手書きされおり、文字もかすれてるなどで判別が難しいケースがあります。
司法書士等の士業は普段からそうした書類を目にしているため判別することは可能ですが、皆様がご自分で解読しようとするとちょっと難しいこともあると思います。

そんな時は請求した役所の人に聞けばちゃんと教えてもらえるので大丈夫です。
メモ書き入れなくても届いた戸籍謄本が読めなければ電話で問い合わせることも可能です。
その時、領収書など窓口から発行された書類を必ず手元に置いて確認するようにしましょう。
戸籍謄本等に記載されている整理番号とは別に領収書や明細書の番号で管理している窓口もあるからです。

これらの作業を繰り返せば、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が揃う形になります。

配偶者の戸籍謄本について

今回の例では被相続人の配偶者(子から見た母親)が既に死亡してます。手続き上は既に亡くなっている配偶者の戸籍謄本も必要なのですが、死亡のタイミングによってその内容が異なります。

被相続人(例でいう「父」)より先に亡くなっている場合

この場合は亡くなったことが記載されている戸籍謄本があれば大丈夫です。

例えば、平成30年に配偶者が死亡し、令和3年に父親が死亡した場合等です。この場合は父親の戸籍謄本を集める中で配偶者の死亡(除籍)の記録が出てきますので、それをそのまま使用できます。

被相続人より後に亡くなっている場合

この場合は被相続人と同じように配偶者についても出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。
ただ、被相続人と配偶者に婚姻関係が生じた後の戸籍謄本は当然のことながら同じ内容ですから、被相続人分と配偶者分を重複して取得する必要はありません。
つまり、配偶者については出生から婚姻までの戸籍謄本を取得すれば良いことになります。

被相続人(父)の戸籍謄本に配偶者の「従前戸籍」というものが記載されていますので、その本籍地の自治体に対して同様に請求すれば良いです。

この時もメモ書きは「出生から転籍迄」としても良いですし面倒なら「全部」とか「出生から死亡まで」としておいても良いです。
なお、上記した「戸籍の附票」については不要ですので配偶者分は省略して結構です。

後は子の現在戸籍(戸籍謄本)と印鑑証明書、不動産の名義人になる人の住民票を取得しましょう。
子の戸籍謄本が必要な理由は相続人を確定させるためだとか生存を証明するだとか色々ありますが深く考えないで大丈夫です。
戸籍謄本ではなく戸籍抄本でも手続き上は大丈夫です。

印鑑証明書は遺産分割協議書に実印を押印する関係上必要な書類になります。
住民票は相続登記時に所有者の住所を申請する必要があり、その裏付け資料としてお考え頂ければ宜しいかと存じます。

ちなみに、今回の例でいう被相続人の配偶者、つまり子の母親が生存している場合は子と同様に戸籍謄本と印鑑証明書を揃えれば大丈夫です。

以上で「人」に関する書類は揃った形となります。